オレンジが咲く木蓮

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子供のころ実家の庭に、木蓮(もくれん)の木が植えられていました。
春になると、色っぽい紫色の花をつける木蓮の木。

けれどその花は美しいだけでなく、どうやら味もよいらしく、お腹を空かせた鳥たちに狙われては、毎年あっさり食い荒らされてしまうのでした。

見かねた両親は、花が咲いたのを見計らって、半分にカットしたオレンジを枝に刺すようになりました。

「ほうら、こっちを食べなさい」と。

一本の木に紫色の花とオレンジが同時に咲いている、今思えばカオスな庭。
花の美しさなど、すっかり忘れてさられているような不思議な光景でした。

 

しかしそのシュールな罠は功を奏し、鳥たちはオレンジだけを食べて飛び去って行くようになったのです。完全勝利!

そんな「空腹の鳥vs木に咲かせたオレンジの戦い」を見張るのが、子供の頃のわたしは大好きでした。


あれから20年、木蓮の木はいつのまにかなくなってしまったけれど、そんなささやかな楽しみは、大人になった私の心にいまだ染み付いています。

たとえば、主人のお風呂あがり。
導線に、冷たい麦茶をこっそり置いておく。
するとそれを見つけた主人が、何も言わずにコクコクとその麦茶を飲みはじめる。

 

「やった!」

 

あの日の小鳥を思い出し、「ふふ、引っかかったな」というようなおかしな優越感に浸れるのです。

 

そして、自分が作ったごはんや淹れたお茶を、誰かが食べたり飲んだりしてる光景は、やはりうれしいものだなぁと、ほんのときどき、しみじみ思います。

夕飯づくりがめんどくさくなったら、この記事、読み返すんだ。